2005年12月28日

尾上松助丈 死去

菊五郎劇団の名脇役・尾上松助さんがお亡くなりになりました。 →

もうもうもの凄くショックです。59歳。若すぎます・・・。
11月の新橋演舞場、行っておけば良かったなあ(公演としても、見たかったんですが、ついチケットを買いそびれてしまい・・・)。

松助さんはオールラウンドプレーヤーと言いますか、良い役・敵役・二枚目・三枚目、立役から女形まで非常に芸域の広い役者さんでした。
時代物も出来る人だったけど、世話物の雰囲気の方が好きだったなあ。

嗚呼、もう松助さんの「助六」の通人や、「文七元結」の籐八を見られないかと思うと寂しい限りです。
心よりご冥福をお祈りいたします。

投稿者 umeko_uguisu : 16:13 | コメント (0) | トラックバック

2005年10月05日

成田屋通信

今をときめく市川家の御曹司・海老蔵君はすっかりお茶の間にも定着しているようですが、
正直言いますと私はお父さんである市川團十郎さんの方が遙かに好きだったりします。
大好きな役者さんの一人であります。

口跡は悪いし、凄く不器用な役者さんなんだけど、
そんな悪い所を吹き飛ばすような大らかな雰囲気とオーラと色気を持っていらっしゃるのです。
江戸歌舞伎の「大らかさ」を体現しているとでも言いましょうか・・・。
(その点海老蔵君はちょいと神経質さが勝つかな・・・先代團十郎ファンには堪らないんでしょうが・・・顔似てるし)
舞台にしゅっと立った姿はそりゃあ男前です。

その團十郎さん、既にメディアで公表されているとおり、
白血病再発の疑いによって入院・闘病生活を送られております。

成田屋の公式webサイトに「成田屋通信」と言うコーナーがありまして、
役者本人からのお知らせなんかがアップされたりしているのですが、
ここ最近ではすっかり團十郎さんの入院日記と化しております。
しかも「日記」と言うより「随筆」と言った趣が強いというか(笑)
成田屋さんの文章は読みやすいですな。
その内容はと言いますと、入院生活がかなりリアルに伝えられております。
「患者」としての團十郎さんの視線や感情がひしひしと伝わってきて、
やはり一筋縄ではいかないものなのだと思わずにいられません。
それでもどこかおおらかな雰囲気がある團十郎さんの文章を読んでいると、
「また直ぐに舞台が見られるだろう」
等と呑気に考えてしまったりして(笑)

本当にきちんと良くなって頂きたいです。
早く成田屋の「勧進帳」がみたいなあ・・・。
富樫は播磨屋(中村吉右衛門さん)、義経は音羽屋(尾上菊五郎さん)だったりなんかしたら、
私劇場に通いますぜ!(笑)嗚呼夢舞台。
誰が何と言おうと成田屋の「勧進帳」の弁慶は天下一品です!間違いないっ。

投稿者 umeko_uguisu : 23:41 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月16日

好きな演目:「勧進帳」

「一番好きな歌舞伎の演目は?」と訊かれたら、
「勧進帳」と即答します。
それ位大好きなお話です。

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(2代目尾上松緑の富樫左衛門。のつもり)

「勧進帳」は、言わずと知れた、安宅の関における弁慶と富樫との攻防を描いた舞踊劇です。
能の「安宅」を題材としており、能の様式を巧みに取り入れています。
地に使われている長唄から振り付けに至るまで、名作中の名作と言っても過言ではないと思います。
あれだけ様式めいた芝居でありながら、登場人物全てに血が通っており、
忠義や意地や情がぶつかり合う様は本当に「圧巻」の一言に尽きます。

それだけに上演回数も多く、別名「マタカノセキ」とも言われてますが・・・。

数年前歌舞伎座において、團十郎の弁慶・富十郎の富樫・菊五郎の義経で上演された時がありまして、
その時は毎週歌舞伎座に通っておりました。
役者それぞれのニンがドンピシャに填っていて、正に現代の三幅対。
「こんなの次はいつやるか解らないよ!」と思って、必死に通ってました。
また、何回見ても毎回不思議な感動を覚えたのも事実でして。
当時大学生の友人(團十郎ファン)で、毎日歌舞伎座に通っていた人もいたなぁ。

西洋の騎士を思わせる幸四郎の弁慶。
「智将」の趣がある吉右衛門の弁慶。
勇壮に舞う富十郎の弁慶。

どの役者もそれぞれに素敵なのですが、
やはり私は、宗家・市川團十郎の弁慶が一番好きです。
熱くて一生懸命で、不器用なんだけど、
理屈抜きに「これぞ弁慶!」と思わせてしまう、圧倒的な存在感。
花道から出てくるだけでわくわくしてしまう、本当に素敵な弁慶なのです。

嗚呼、成田屋(=團十郎)の弁慶が猛烈に見たくなってきた・・・。
と言うか、「勧進帳語り」と言うより、「團十郎語り」になってしまいました(笑)

投稿者 umeko_uguisu : 12:46 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月05日

七之助君の事件について思うこと

最近うんざりする程テレビで流されている七之助君の暴行事件について何ですが、
一般世間と歌舞伎ファン及び関係者との温度差をちょっと感じてしまいました。

七之助君、謝罪会見で一切弁解も釈明もしてないですよ。
近頃珍しく誠実な謝罪会見だったと思うんですがね。
あれでも世間の人は「甘やかしている」と見るのかしらん。
島田伸助に関してはあんなに養護する報道してるのに。

「襲名披露公演中止すれば」とか言ってる一部マスコミもいるようですが、
無茶苦茶です。無理だっつうの。
襲名披露公演に、どれだけの人間と金が動いているのか。
どれだけ先のスケジュールまで組まれているのか。
勘三郎襲名が延びれば、来年予定されている坂田藤十郎襲名はどうなるんだっつの。
そんなこと松竹が認める訳無いのに。

来月からの勘三郎襲名披露公演、多分七之助君は出演すると思います。
(本人や勘九郎さんは兎も角、松竹が多分出させるんじゃないかなあ)
出ようが出まいが、本人にとっては針の筵状態であることは変わらない訳ですから、
何とかここで踏ん張って欲しい。
馬鹿なことをしたというのは、本人が一番解っている筈なんですから。

投稿者 umeko_uguisu : 17:51 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月04日

好きな歌舞伎役者:中村歌昇

前回、真っ先に上げた贔屓役者が故人というのもどうかなと思ったので、
存命中の方で私の一番の「贔屓役者」について書いてみます。

「贔屓」と言う言葉には、「ファン」という言葉とは何か違う物があるような気がします。
ただ闇雲にぎゃんぎゃん騒ぐんじゃなくて(勿論それなりには騒ぎますが)、
お金があればご祝儀弾んだりして(出来ませんが)
時には厳しいことも言ったりして、その役者さんの成長を見守っていく。
そんな「御贔屓筋」になってみたいとも思うのですが、如何せんじぇんこがありませんですよ(泣)

で、私の贔屓役者・中村歌昇さん(屋号・萬屋)。
萬屋錦之助さんが叔父に当たります。

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(「彦山権現誓助太刀(ひこさんごんげんちかいのすけだち)」六助)

現在中村吉右衛門さんと一緒に舞台に出られることが多いです。
どちらかと言えば、脇役が多い・・・。

歌昇さんの魅力は、何と言っても明朗な口跡と、きびきびとした踊りにあります。
数年前歌舞伎座の8月納涼歌舞伎で、勘九郎・三津五郎(当時:八十助)・歌昇と踊りを3本立て続けに出したことがあったのですが、
(演目は、勘九郎「お祭り」、八十助「供奴」、歌昇「鳥羽絵」でした)
勘九郎・三津五郎という踊りの名手の中で、全く見劣りがしないんですね。
歌昇ここにあり、と言った感がありました。

たまに大きなお役もされるのですが、
「車引」の松王丸と、「吃又」の又平は本当に印象に残ってます。
どちらも義太夫物の大役。
当時楽屋に御邪魔させて頂いたのですが、
本当に役に真摯に取り組んでいるのがびりびり伝わってくるんです。

本当に、一度で良いから、歌昇さんの「勧進帳」の弁慶が見たい!!

投稿者 umeko_uguisu : 23:57 | コメント (0) | トラックバック

2005年02月02日

暫く暫く:歌舞伎十八番のススメ

kioicho01.jpg

随分昔に描いた、二代目尾上松緑さんの「暫(しばらく)」の似顔絵。
松緑さんの格好良さが、全然伝わらないのが悲しい。

「暫」は、超有名狂言「勧進帳」と同じ、「歌舞伎十八番」の一つに数えられている演目です。
が。
「勧進帳」と同じ感覚では見ない方が良いかも・・・。
もとい、「勧進帳」だけが例外かな、と一寸思っています。

何故なら、「歌舞伎十八番」はそもそも7世市川團十郎が制定した市川家の演目ですが、
そのあらすじは、どれもよく言えば荒唐無稽、ハッキリ言えばハチャメチャ。

天井に仕掛けた磁石でお姫様の髪の毛が逆立つとか(「毛抜」)
龍神を滝壺に閉じこめた為、地上に一滴も雨が降らないとか(「鳴神」)
「暫く暫く暫ーく」の一声で、悪人共がビビリまくるとか(「暫」)

矛盾の山、ツッコミの嵐なのです。
その中で、骨太の男同士のドラマを重厚に見せる「勧進帳」は、一寸異色かも。

でも、なんだかんだ言っても「歌舞伎十八番」の演目に流れる、
駘蕩とした大らかな雰囲気が大好きだったりします。

その雰囲気を一番味合わせてくれるのは、やっぱり現代の市川宗家、十二代目市川團十郎さんなんですけどね。
(今をときめく市川海老蔵君のお父様。)

ああ、成田屋の「勧進帳」の弁慶が見たいよーう(現実逃避・・・ふっ)

投稿者 umeko_uguisu : 00:54 | コメント (0) | トラックバック

2005年01月17日

好きな歌舞伎役者:尾上松緑

折角日本文化に特化したブログを作ったので、歌舞伎の贔屓役者語りでもしてみようかと。

「役者さんは誰が贔屓なの?」
と聞かれたら、真っ先に出てくる名前が「尾上松緑」です。

但し、「二代目尾上松緑」ですが(笑)

残念ながら、私は紀尾井町(敢えてこの名前で呼ばせて頂きます)の、生の舞台に接することは出来ませんでした。
紀尾井町は、私が本格的に歌舞伎を見始める5年前に、あの世に旅立たれたのですから。
ですから、当然過去の舞台写真でしか紀尾井町の姿を見ることが出来ず、
「ふーん、この人が嵐君(=現尾上松緑)のお祖父さんかあ」
程度の認識しかありませんでした。
そりゃ、「隈取りが映える良い顔をしてるなあ」とは思いましたけど。

ところが、ある日テレビで初めて紀尾井町の舞台を見ることが出来たのです。
演目は「浮かれ坊主」。
下帯一つに薄物の羽織と言う寒々しい形の願人坊主が軽妙に踊る、洒脱な演目です。
最初の「ときたりやなきたりやなと」で、余りの声の良さにすっかり惚れ込んでしまい、
踊りの格好良さにまたしても惚れ込んでしまい、
それからは必死になって紀尾井町のビデオを集めまくったものです。

「熊谷陣屋」の胸をえぐられるような悲しみと無常観。
「勧進帳」の勇壮な弁慶。
「蘭平物狂」の大掛かりな立ち回り。

隈取りが良く映える顔、立派な声、素晴らしい押し出し、そして巧みな踊り。

あんな役者さん、もう二度と出てこないでしょう。
きっと時代がもう、大時代なおおらかさと江戸前の雰囲気を併せ持つ役者さんを出なくさせているような気がするのです。
(多分今の團十郎さんでおしまいだと思います・・・)

それだけに、どうしても紀尾井町の舞台に惹かれてしまうのかもしれません。
本当に格好良いです。
「連獅子」の押隈と「髪結新三」のブロマイドは、私の宝物です。

投稿者 umeko_uguisu : 22:31 | コメント (0) | トラックバック